ひょんなことから日本料理店を開業することになり、2017年5月、アルバニアの田舎町シュコドラで初めてとなる日本料理店「Sushi te Shoki」をオープン。地元アルバニア人を相手に日々奮闘している。ちなみにまだ世界一周の途中。
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まいど!世界に日本料理を伝える開業シェフトリップラーのShokiです!
トリップラー初記事となる今回は、僕が2017年5月に、アルバニアで日本料理店を開業した経緯を、マルっと赤裸々に語りたいと思います。
アルバニアはまだまだ日本人には馴染みの薄い国ですが、これを読んで少しでも興味を持っていただけると嬉しいです!
アルバニアに来た経緯
世界一周中なんです!
僕は今も、世界一周の旅の途中です。以前バックパッカーとして1年半くらいダラダラとアジアを回った後、さぁこれからヨーロッパ回りますか!ということでアルバニアへきました。
それまでの旅の様子はコチラ(世界一周ローカル旅)
なぜアルバニアに来たの?
日本で生活していた頃に、テレビでアルバニアのことを放送していて、面白い国だなぁと思っていました。この記事の最後に、少しだけアルバニアの歴史を振り返りますが、鎖国、無神国家、ねずみ講!これだけネタがそろった国はなかなか無いのでは!?(笑)
アルバニアで長期滞在した理由
ワーカウェイ
元々長期滞在(と言っても1-2週間程度)をして、現在のアルバニアの様子をじっくりと見てみようと考えていました。なので、ワーカウェイというサイトを利用して、シュコドラにある安宿でボランティアさせていただくことになりました。
具体的には、毎朝起きると宿泊者の朝食の準備をし、チェックアウトしていったベッドから順にベッドメイキング、宿全体の清掃をします。大体5時間前後ゆる〜く働くのですが、その報酬として、無料で宿に宿泊させてもらう生活をしていました。季節は夏の終わり。最初は1週間の予定だったのですが、その宿の居心地があまりにもよく、ついつい2週間、3週間、と滞在期間が延びてしまいました。
密かな恋心
ちなみにこれはまだ誰にも言ったことがないので内緒にしといてもらいたいのですが、その宿で働いていた、アルバニア人のスタッフの女の子に、僕は密かな恋心を抱いていました。
メディーナというまだ20代前半の女性なのですが、誰にも真似できないレベルの八方美人で、接客が神でした。時々メディーナは就業後、僕を町のカフェやバーに連れて行ってくれました。おやすみ、と言ってそれぞれが家路に着いたあとも、メッセージのやりとりをする日々が続きました。
季節は秋にさしかかり、宿泊客も減り、昼間の宿は結構暇だったので、僕たちはいつもレセプションの横で話したり、メディーナ手作りのボードゲームをしたりして遊びました。
これはひょっとして・・・?いつしか僕はメディーナに恋心を抱くようになりま(・・・いや、一度は外国人の女性と付き合ってみたい!結婚は無理だけど、という歪んだ気持ちもあったかもしれません。が、とにかく、僕はメディーナのことが大好きで)した。
アルバニアに来て1ヶ月が経ったころ、僕は少しだけ開業を意識するようになっていました。もしこのままメディーナと付き合っちゃったりしたら、もう開業はほぼ確実なものになる。そんな理由付けが欲しかったのかもしれません。
僕はこう見えて、意外と肉食系なので、いくときはいきますし、やるときはやります。そんなある日、僕は決心しました。
告白しよう。
宿の外で遊んだことは何度もありましたが、メディーナと二人きり、というのは一度もありませんでした。なのでまずは、二人きりで話せる関係性を築く必要がありました。
「め、メディーナ。よかったら今日仕事終わったら二人でカフェ行かない?」
「うーん、ちょっと考えとくね。」
・・・。
その後、メディーナと二人でカフェへ行くことはありませんでした。
お試し開業
季節は冬にさしかかり、旅を再開する意欲が日に日に億劫になってきていた、そんなある日のこと。宿のスタッフみんなで昼食を食べながら話していると、なんと僕がこの宿のキッチンを借りて、お試し開業をしてみよう、という話に発展しました。
人口10万人、日本料理店が一軒も無いシュコドラという小さな町で、大きな挑戦がはじまりました。とりあえず宿が暇な春頃まで、ということで。
具体的には、毎日僕が日替わりで日本料理を作り、宿泊者や地元民に食べにきてもらう、というもの。から揚げ、カレー、お好み焼き、いろんな料理を作りました。やっぱり寿司も食べてもらいたいな、ということで、ダメ元でブログで呼びかけてみると、なんと有難いことに、海苔やだしの素を日本から送ってくれる方々まで現れました。
噂を聞きつけた近所のカフェバーオーナーから、ハッピーアワーに寿司を作ってほしいとのオファーまで頂き、週に一度は超満員のカフェバーで寿司を振舞わせていただいたりもしました。
開業を決心!準備に追われる日々
日本料理店「Sushi te Shoki」の理念
様々な偶然が重なってできたお試し開業。いつしか寿司がメインとなり、寿司を楽しみに食べにきてくれる人もいる反面、ほぼ全員が一度も寿司を食べたことの無い人でした。
この町は外食文化があまり発展していません。さぁ今日は外食しようか!と町へ出ても、選択肢はイタリアンか地元料理のみ。あと飲食店はファストフードかカフェしか無いんです。
僕が開業を決心した理由、それは、
アルバニア人に日本料理を知ってもらいたい、という単純な思いからでした・・・。
開業までの大筋
開業を決心したことを宿のオーナーに報告すると、大喜びしてくれました。手助けできることがあればなんでも言って!と、早速開業に必要な手続きをサポートしてくれるエコノミストを紹介してくれました。
エコノミストの説明によると、開業までの大筋はこうです。
1.物件の契約
2.物件の営業許可取得
3.個人の就労許可取得
4.個人の長期滞在許可取得
合間合間に税金の払い込みが必要です。
物件を契約!家賃は?
早速、契約する物件を決めるために、いろんな時間帯に町中を歩き回って人の流れを調査しました。この時点でシュコドラ滞在歴は5ヶ月くらい経っていたので、大方の予測はついていましたが。
不動産屋には何件か物件を紹介してもらいましたが、なかなか納得のいく物件が無く、最終的には自分で見つけてきた物件を不動産屋に教えて仲介してもらいました。
オーナーは英語が話せないので通訳もしてもらいながら、何とか契約成立!
広さは約32平米でトイレ付き。家賃は月々3万レク(約3万円)です!
一時帰国
いつの間にか日本には2年以上帰っておらず、開業するとなると今度いつ帰れるかどうかもわからないので、この機会に一時帰国することにしました。
まずアルバニアにいる時から、Amazonで必要な物資を大阪の実家へ大量に送りました。それを現地へ持って帰るのですが、全然持ちきれず、結局ほとんどは郵送しました。送料だけで数万円払っています。
長期滞在許可の申請をする為には、犯罪経歴証明証というものが必要で、これを警察署まで発行手続きをしにも行きました。
東京に絶対会いたい人がいたので会いに行って、祖父の法要に行って、2年ぶりに家族で食事をして、空いた時間は友人と飲みに行って、あまりゆっくりしていられる時間も無く、バタバタした10日間でした。
ビザは?労働許可は?滞在許可は?
海外開業すると言うと、まず聞かれることが多いのが、ビザ関係ですね。正直アルバニアは今もなお激動の時代でして、いろんなことが日々変わっていて、色んなシステムも今後変わる可能性が十分に考えられます。が、一応ここでは僕が実際に提出した書類等を紹介しておきます。ちなみにアルバニアでは労働ビザというものではなく、労働許可と滞在許可をそれぞれ申請します。
労働許可の申請に必要なもの
パスポート、申請書、顔写真4枚、営業許可証、税金の領収証、住居の契約書、1万レク(約1万円。これは最初の1年分で以降は2年更新)
滞在許可の申請に必要なもの
上記プラス、犯罪経歴証明証(アルバニア語訳の公証コピーを現地で用意)、アルバニアの健康保険証
どうでしょう?日本よりは簡易なのかな?
DIYと内装
もともと自分でなにかを作り上げるのが好きなので、DIY(Do It Yourself)には以前から興味がありました。
ということで、いろいろと調べてはみたのですが、結局工具とかを買うとなるとお金はかかるし、材料店へ行っても会話にならないしで、最終的にはめちゃくちゃ信頼できる内装屋さんをひとり見つけたので、ずっと彼に任せきりでした。僕は壁の塗装をしたぐらい(笑)
あとはその内装屋さんが、僕の指示プラス、彼の知識を掛け合わせて超いい感じに仕上げてくれました!
その様子は動画に収めてあるので、是非見てください!
遂に迎えた人生初開業!
オープン初日
さすがに町で初めての日本料理店ということで、意外と注目を浴びていた様で、開店早々満席となり、全然オーダーが追いつかなくなってしまいました。全16席なので、ひとりで回せるやろ、と高をくくっていましたが全然でした。
たまたま同じ宿でボランティアをしていたアメリカ人の男の子が自ら手伝いにきてくれて、ホール業務をしてくれたおかげで、なんとかなりました。
初日から嫌になりそうでしたが、なんとか良いスタートが切れたんだと思います。
海外の日本料理店あるある!?
まず味覚が全然違うんだなぁ、ということをひしひしと感じています。
一番わかりやすい例としては、アルバニア人が寿司を食べるときに使う醤油の量が、半端無いんです。小皿に醤油をなみなみ入れて、寿司が醤油でだくだくになるまでつけて食べるんですよね。「お前味覚おかしいで!」と言いたくなるのを抑えて、醤油は少しで十分なんだよ、と教え込むのがやっとです。というのも、醤油はアルバニアでは高級品。あまり無駄に使って欲しくないんですよね。
もしかしたら、もっと濃い味の寿司にすれば、アルバニア人にもっと受け入れられるのかもしれません。でもそうすると、どんどん日本の味から離れてしまいます。アルバニア人は日本の味に興味を持ってきてくれるのに、逆にこっちが歩み寄り過ぎては、誤解が生じるし、それはそれは日本人的には美味しくない寿司が出来上がってしまう・・・。
こんなジレンマに日々板ばさみ。他国の日本料理店オーナーの皆様も同じ様な悩みを抱えていると思います。よね?(笑)
今後の展望·夢
話せばかなり長くなってしまうので、ここでは簡潔にまとめます。(長い版はこちら)
単純に、僕は日本料理がもっと世界に広まればいいな、と思っています。
さっきまで知らなかったことを新たに知る。これってすごく面白いことだと思うんです。そうして見えてくる世界がある。世界を見る視野が広がるんです。
たまたまアルバニアのシュコドラには、日本料理店が一軒もありませんでした。だからシュコドラの人々の大半が寿司を食べたことがなかった。でもSushi te Shokiがオープンして半年、最近では寿司があるのが当たり前になってきている人も結構いると感じます。そう、この過程がめちゃくちゃ楽しいんです。
実は、これからもっとアルバニアで日本料理が広まったら、Sushi te Shokiは別の誰かにあげてもいいかなと考えています。
その後の僕は、また別の国の日本料理店がない町で日本料理店を開業して、そこで日本料理が広まったらまた別の町へ・・・。
最近は、こんなことを考えているんですけど、一緒にやりたい人いますか?そこまでの物好きなかなか現れないんですけどもしいれば、一緒に面白いことしましょう(^^)
熱のこもったメッセージお待ちしております!!
アルバニアの概要
それでは最後に、アルバニアの場所と歴史をさらっと振り返って締めさせていただきたいと思います。
僕がアルバニアに興味を持ったきっかけは、歴史(特に近代史)でした。なのでみなさんに少しでもアルバニアに興味を持っていただけると嬉しいです!激動の百年間、アルバニアでは一体、何が起きたのでしょうか!?
アルバニアってどこ?
一応、東ヨーロッパの国ですね(笑)
南隣にギリシャ、北隣にモンテネグロ、東隣にコソボとマケドニア、西側にアドリア海を挟んだイタリアまでは、フェリーで一晩で行けますよ!
アルバニアの歴史をさらっと解説
1912年、オスマン帝国から独立を宣言する。しかし、その後第一次世界大戦の影響を受け、君主不在、無政府状態に陥るなど、不安定な時代に突入。
1925年、アフメド・ゾグーが大統領に就任し、アルバニア共和国となる。
1928年、アフメド・ゾグーはゾグー1世として王位に就き、アルバニア王国となる。
1941年、後のアルバニア黒歴史をつくるエンヴェル・ホッジャを書記長として、アルバニア共産党が成立する。
1946年、王政の廃止。エンヴェル・ホッジャを首班とする、共産国家アルバニア人民共和国を設立。当初親交の深かった、ユーゴスラビアやソ連とは、色々あって断交。国際社会からどんどん孤立していく。
1967年、中国の文化大革命に刺激され、無神国家を宣言。一切の宗教活動が禁じられる。
1968年、ワルシャワ条約機構を脱退。ソ連を仮想敵国として、国民ほとんどに銃器を渡らせる国民皆兵策など、極端な軍事政策がとられる。また、国内全土にトーチカと呼ばれるコンクリート製の防空壕のようなものを大量に建設する。その数は50万とも70万とも言われています。(ちなみにこのトーチカは今でも頑丈過ぎて取り壊せておらず、その辺でよく見かけます。)
近隣諸国とはほぼ鎖国状態が続き、経済もどんどん悪化していく。
1976年、中国の文化大革命が収束すると、一転中国を批判。頼みの綱であった中国からの援助もなくなる。同年、アルバニア社会主義人民共和国に改称。
1980年頃には、ヨーロッパ最貧国と揶揄されるようになる。
1989年、エンヴェル・ホッジャの死後、全国的に反政府デモが起こる。
1992年、戦後初の非共産政権が誕生。徐々に国際社会への復帰を目指す。
しかしその後、全国的にねずみ講が大流行!鎖国していたため人々には経済の知識が無く、国民の大半がハマってしまう。
1997年、ねずみ講発覚後、米軍やNATO軍が出動するほどの大暴動に発展。
経済的混乱は、今でも尾を引いている?
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